初めてあなた宛てに手紙を書きます。
こうして改めて想いを書き出そうとすると、なかなか筆が進まないのが可笑しく思えます。(実際はボタン操作ですが)
あなたとの出逢い。記憶を手繰ると歌番組でしょうか。女性司会者がバンド名の由来を訪ねた映像がもっとも古い記憶と思います。
あなたはその質問に対して「ある日作成しよう」と語呂合わせで名前をつけた。とおっしゃいましたね。それがいい加減な嘘と気づいたのは、かなり後のことです。かといって本当の意味は謎のままで、最近までちゃんとしたRCの意味を知るに至りませんでした。
あなたの書く歌詞の深さ、美しさや可愛らしさ、言葉遊び。また、人間としてのパワー、生き様を僕に教えてくれたのは、当時の彼女でした。
あの子の熱のいれようは凄まじいもので、雑誌にあなたの名前を見つけただけで買うほどでした。時期的にはソロアルバム『RAZOR SHARP』の頃でした。
当時は光ディスクにコピーすることや、データとして持ち歩くなんてことは、ドラえもんのひみつ道具がないと出来ない夢のようなこと。
曲順や時間を考え、レコードからカセットテープに編集録音したBESTをプレゼントするのが普通でした。
例にもれず、僕にRCのBESTを作ってくれました。このテープ、今でも手元にあるんですが、とてもよく編集されていて、このままライヴのセットリストでもおかしくない選曲。
少し脱線しました。
そのテープがきっかけであなたの音楽に触れ、彼女と別れたあとも、今日まであなたの音楽は僕の傍にあります。
そう想うと、彼女なくして今の僕はいないといえます。あなたの素晴らしさを教えてくれた彼女に感謝です。
それからしばらくして、発禁問題、バンドの分裂、ソロと、あなたの激動の時期になりますが、僕もあなたとシンクロするように、出逢いと別れ、新生活をなど慌ただしく環境が変わったりと、なんだか節目節目にあなたの音楽があったように感じます。
僕は直接ではないにしろ、あなたの歌、言葉から、学校では教えてくれないたくさんのことを教わったように思います。
それは、モノを観る目だったり。
それは、前向きな気持ちだったり。
それは、直向きさだったり。
それは、見て見ぬ振りはしない。言うべきことは言う態度だったり。
それは、護るべきモノや人は、全力で護る姿勢だったり。
それは、人を好きになることの素晴らしさだったり。
それは、人を愛する尊さだったり。
それは、人を赦す行為だったり。
あなたは癌すらも赦していたのではないでしょうか。
僕はあなたのような人間になりたいのかもしれません。
僕の前を、何歩も先を行くあなたの背中を、知らず知らずのうちにお手本にして、同じ時間を生きてきたのかもしれません。
しかし、あなたの時間は止まってしまいました。
今は哀しみというより、喪失感や空虚感が大きく感じられます。そのためか、不思議と涙は出ません。
僕の中で、まだ受け入れられないような、思い出にしたくない、過去にしたくない気持ちがあるからでしょうか。
それとも、容れ物の肉体が好きだったのではなく、あなた自身の魂を好きだったからでしょうか。
ひょっとしたら、あなたの魂は今も、これからもずっと生き続け、みんなの傍にいる。深いところでそう感じてるからでしょうか。
もしかしたら、遅かれ早かれ僕もいずれ死ぬわけだし、あの世で逢える日がくると、わかってるからでしょうか。
これから先、空を見上げてあなたを探してしまうことがあるかもしれませんが、その時は大目にみてやって下さい。
最後に。
サンキュー。サンキュー、エブリボデー。
忌野清志郎を、みんなを、愛してまーす!